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「やっぱり染色体の劣化が早すぎるのが難問よね」
サユリ・エヴァンスは量子コンピュータが弾き出した結果を眺め、一人ため息を吐いた。
人類の肉体のキャパシティが限界値まで引き上げられる手法が発見された現代において、人類の文明を発展させるためには人間を進化させなければならない。
旧時代の人類が、まだ宇宙開発を始めた頃の倫理観はとうになくなり、今では各国の研究機関はこぞって人類の遺伝子を操作し、新人類を作り出すことに躍起になっていた。
『人間には無限の可能性がある。』
そんなことを声高に唱える者は今では誰一人としていない。そんな時代。
サユリも他の者と同じく新人類を生み出す研究に明け暮れていた。
仮に、人間という生物にまだ無限の可能性があるとすれば、それは脳だけだろう。
しかし、人間の肉体は脳を除いた部位を切り捨てて活動することは出来ない。
まずは人間の肉体を強靭な物にすべく、遺伝子レベルでの強化改造をしようというのが、サユリの所属する研究機関――BABELの方針であった。
しかし、その研究もある問題に悩まされていた。
その問題というのが性染色体の劣化現象である。
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