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「こわいユメをみたの……」
そう言って駆け寄る子供を優しく抱き止め、絹糸のような白い髪に触れながら頬笑むサユリ。
子供の名前はNo.57826-YU。
サユリに懐いてよくじゃれてくるので、サユリはユウと呼んで可愛がっていた。
「怖い夢?」
不安気な顔をするユウが安心できるようにと視線を同じ高さにするサユリ。
ユウは暫し視線を彷徨わせるとポツポツと語りだした。
「遠くに連れていかれる夢を見たの。サユリ先生にもうずっと会えなくなるくらい遠くに連れていかれる夢を……」
「そうなの。でも安心して、あなたはずっとここに居れる。どこにも行ったりしないわ」
サユリはもう一度ユウの頭を優しく撫でると、ユウも落ち着いたのか、きつく結んだ眉をゆるめた。
(どこにも行かない? 行けないの間違いなのにね)
サユリのベッドで寝息を立てるユウを見ながら、彼女は紫煙を燻らせ自嘲する。
量子コンピュータの画面の端に、喫煙禁止のマークが表示されたのを見たサユリは、舌打ちしながらも煙草を揉み消した。
(ユウの見た夢……気になるわね)
サユリは研究員の管理権限を使ってユウの部屋の記録にアクセスする。
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