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ユウがサユリの部屋に来る前、正しくは就寝前にどのようなことをしていたか見るためだ。
夢というものは脳が記憶を整理する時に見るものだから、その日ユウが何をしていたか、何を感じたか、それがが分かれば、なぜそんな夢を見たかが分かる、とサユリは思ったのだ。
「ここね」
サユリはユウが日々行われている測定を終わらせて部屋に戻るシーンで記録映像を止める。
そのシーンでユウは、廊下の曲がり角で数秒間足を止めていたのだ。
サユリは音声バーを弄りその場面の音を聞く。
『知ってるか? 今ここで行われている研究が凍結されるって話』
『ああ、なんでも長年対立していたEVE機関と融和条約を結んだらしいな。あちらさんの方が生体強化、とりわけアポトーシス関連の研究が進んでいたからな。上の連中もやむ無し、と言ったところか』
『こっちで行われている一部の研究はあちらに組み込まれるらしいぞ』
『Zシリーズだろ? それ以外は廃棄処分されるらしいな』
『研究員の方は?』
『それならZシリーズの研究チームだけあっちに拾われて、後はほとんどコレさ』
『また失業率が増えるなぁ』
『だな』
ゲラゲラとした笑い声のところでサユリは映像を止めた。
「なるほど……ね」
サユリは椅子の背もたれに寄り掛かると、大きく息を吐いた。
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