創世記11章1-9節

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「明日……朝イチで確認しなきゃね」  サユリの体に一気に疲労がのし掛かる。目の間を二三回揉んでサユリは椅子から立ち上がると、白衣を脱ぎ捨てベッドに潜り込んだ。 「所長、凍結の話、聞きました」 「なぜその話を……いや、遅からずわかること。どこでとは問わん」  サユリは翌朝になるとすぐに所長室を訪れていた。開口一番に研究の凍結を聞いた瞬間、いつも横柄に椅子にふんぞり返っている所長は驚いた顔をしたが、すぐにいつもの憮然とした表情に戻ると、デスクの上に置かれたカップに口をつけた。 「選抜チームはEVEの方へ行く。残りの研究員はほぼ全て実験体と一緒に処分されるが……君はその中に含まれていない」 「あちらへも行かず、殺処分も免れる? では何をさせると? どのみち今のご時世では、職のない者がたどる道なんてそう多くはありませんが」  サユリは特に感情も込めず、今後自分がどうなるのかを淡々と所長へ問い掛ける。 「聞いたのだろう? ″凍結″だと。つまり中止ではないということだ。この施設も研究こそ停止するが、最低限の維持管理だけはされる。そのポストを君に、と思ってね」 「……どうして私が?」     
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