創世記11章1-9節

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「ええ、ユウが見た恐い夢みたいにならないか確かめに行ってきたの。とても偉い所長が″大丈夫だよ″って言っていたわ」 「ほんとう? じゃあずっとサユリ先生と一緒にいられるの?」 「ええ、私はずっとあなたと一緒よ」 「よかったー」  ユウはサユリの脚に抱きつく。その声は心の底から安心しているようで、サユリの胸にチクリとした痛みをもたらした。 「さあユウ、今日も検査があるから部屋に戻って」 「はあい」  名残惜しそうに幾度か振り返りながらも、ユウはサユリの部屋から出ていった。  午後。昼食を終えたサユリはデスクに座り定時報告のメールを見ていた。他の研究員たちは網膜フィルムの導入手術を行っているので、雑事をこなしながらでも見れるのだが、サユリの場合、所長命令で人体キャパシティを拡張する手術を一切受けていなかったので、提示報告の確認は自分のデスクにある量子コンピュータから行うしかなかった。 「あら?」  サユリは更新されたメールに違和感を覚えた。そこにはいつも通り、研究内容の報告だけの文面の件名しか並んでなかったからだ。 「検閲でもされてるのかしら?」  コンピュータのプログラミングはサユリの専門外なので詳しいことは分からなかったが、それにしてもおかしいと彼女は思った。 「どういう事なの?」     
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