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1週間が経ち、何の連絡もないままに、待ち合わせ時間に、待ち合わせの場所である駅に着いた。
「うわぁ」
初めて見る駅、そして列車。
これが、沢山の人を乗せて、動いて、遠くまで人や物を運ぶのか!凄い!それにこんな大きな物が動くなんて!
どうやって動くんだろう?中はどんなになっているんだろう?
俺は列車に近付いて、ぺたぺた触ってみたり、覗き込んでみたり、子供のように色々と見て回った。
そんな俺を見失わないようにしながら、シキミはキョロキョロとヤシンを探していた。もうすぐ列車の発車時間だと言うのに、ヤシンの姿はなかった。
俺は心のどこかで、こうなると思っていた。あの夜、ヤシンは凄く傷ついていたし、怒っていた。だから、もう俺の事なんか嫌になったのだと。
全ては俺が悪い。だから仕方ない。これからはまた、一人で生きていけばいいだけ……。
涙が一粒地面に落ちた時、地面に人影が現れて、俺がゆっくりと顔を上げると、肩で息をするヤシンが立っていた。
「すみません、途中で馬が怪我をして馬車が動けなくなってしまって。あ、これ切符です!時間がないので、とりあえず乗りましょう!シキミも早くっ」
ヤシンは俺の手を取って走り出した。後ろから走ってきたシキミが、俺の肩をポンっと叩いて
「ヤシンが来て良かったね。って、俺があんなことしたからいけないんだけど。バネさん、本当にごめんね」
小声でそんな事を言ってきた。
俺は、俺の手を握るヤシンの手を、恐る恐る握り返した。
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