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久しぶりに会ったカバネさんは、今まで見たことのない暗い表情で、元気がなかった。
列車に乗る前に、声をかけた時、目が真っ赤になっていて、涙で濡れていた。
あの日、カバネさんがシキミに、中まで掻き乱されてしまった時、僕以外の男に、ましてシキミにそこまで体を許した事が、腹立たしかった。でもそれ以上に、シキミのカバネさんに対する気持ちに気づいていて、いつかカバネさんに手を出す事も危惧していたのに、シキミを側に居させた自分にも腹が立った。
だけど、僕と離れている間、カバネさんを変なのから守れるのは、それを頼めるような信用出来る相手は、あの時シキミしか居なかったし、今もまたシキミしか居ない。
そんな事もあって、あの日はカバネさんに、意地悪というよりキツく当たってしまった。この腹立たしさが落ち着かないと、またカバネさんにキツく当たると思って、あえてあの日から話しかけなかったのだけど、それは逆効果だったようだ…。
あの日も泣かせてしまったのに、今日もまた泣かせてしまった。
だけど、列車に乗ってからのカバネさんは、だいぶ笑顔が戻ってきた!
やっぱり、海岸の街までそれなりに長旅だし、2人の時間がいくらでも欲しいと思って、
一車両貸切にしたのが良かった!←財力にものを言わせた
シキミにも、文句も邪魔もされないように、
一車両貸切にしたし!!←とんでもねぇ財力
カバネさんは列車に乗ってから、車内を目をキラキラさせながら、あっちこっち見ていた。
「凄い!本当に動いてる!こんなに大きくて、こんなに沢山の人や物を乗せているのに、こんなに早く動いてる!」
そう言いながら、色々な所を覗き込んだりしながら、カーテンの掛かっている所が気になったのか、カーテンをそーっと開けた。
「ここは…?」
「ここは寝台です。それなりに長旅ですからね、狭いし、硬いですけど我慢して下さいね。あと、奥に一応、シャワー室もあります。お風呂は無理なので、とりあえず、シャワーで我慢して下さい」
僕が背後から声をかけると、カバネさんはビクリとと大きく体を震わせた。
「カバネさん、僕が怖いんですか?」
僕はカバネさんの体を、後ろから優しく抱きしめた。
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