1 海へ行こう

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俺とシキミが、温泉のある街を出発し、ヤシンのいる村を目指して、3分の1くらい進んだ所で、突然に剣からヤシンの声が響いた。 「カバネさん、聞こえますか?」 俺とシキミは、突然響いたヤシンの声に、同時に体を震わせて、キョロキョロと周りを見渡した。 「バネさん、俺の耳が正常なら、ヤシンの声はバネさんが背負っている剣から……聞こえたと思う」 確かにシキミの言う通りで、俺も背中からヤシンの声が聞こえた。実際もう何度も、剣からヤシンの声は聞いていて、その声を聞きながら、とてもふしだらな事もしていた訳で……。 俺は背中から剣を下ろし、目の前に立てた。 「あ、カバネさん、聞こえてますね」 「……やっぱりお前、俺の事見えてるよな?この剣の鞘に、カメラとか付いてるよな?」 俺は少し涙目になりながら、思わず剣を揺さぶった。 盗撮されてる事なんて、気付いていたけど!知ってて、ふしだらな事したけど!でも、それは俺の思い込みだと、そう思わせて欲しかった…。 「あー、それは今は気にしないということでお願いします。あの、僕実は、これから仕事で海岸の街まで行かないといけなくなって」 「海岸って、それはまた遠い所に」 横で聞いていたシキミが、思わず呟いた。 「だから、列車が発車する駅で待ち合わせして、カバネさんも一緒に行きませんか?そこからなら、大体10日位で駅まで来れると思うんですけど」 「おい、俺は無視かい…」 シキミは剣に突っ込みを入れていたが、俺はヤシンに一緒にと言われた事よりも、現在地から駅までの移動日数とか、当たり前に計算された事に、改めて恐怖を感じた。 現在地を把握されてる。これも以前からだけど、こう当たり前に話されると、やっぱり恐怖だ。 しかし、海岸の街…つまり、海! 初めての海!しかもヤシンと!←俺もいるよ(シキミ) 行きたい、いや、行くに決まってるじゃないか!
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