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俺とシキミが、温泉のある街を出発し、ヤシンのいる村を目指して、3分の1くらい進んだ所で、突然に剣からヤシンの声が響いた。
「カバネさん、聞こえますか?」
俺とシキミは、突然響いたヤシンの声に、同時に体を震わせて、キョロキョロと周りを見渡した。
「バネさん、俺の耳が正常なら、ヤシンの声はバネさんが背負っている剣から……聞こえたと思う」
確かにシキミの言う通りで、俺も背中からヤシンの声が聞こえた。実際もう何度も、剣からヤシンの声は聞いていて、その声を聞きながら、とてもふしだらな事もしていた訳で……。
俺は背中から剣を下ろし、目の前に立てた。
「あ、カバネさん、聞こえてますね」
「……やっぱりお前、俺の事見えてるよな?この剣の鞘に、カメラとか付いてるよな?」
俺は少し涙目になりながら、思わず剣を揺さぶった。
盗撮されてる事なんて、気付いていたけど!知ってて、ふしだらな事したけど!でも、それは俺の思い込みだと、そう思わせて欲しかった…。
「あー、それは今は気にしないということでお願いします。あの、僕実は、これから仕事で海岸の街まで行かないといけなくなって」
「海岸って、それはまた遠い所に」
横で聞いていたシキミが、思わず呟いた。
「だから、列車が発車する駅で待ち合わせして、カバネさんも一緒に行きませんか?そこからなら、大体10日位で駅まで来れると思うんですけど」
「おい、俺は無視かい…」
シキミは剣に突っ込みを入れていたが、俺はヤシンに一緒にと言われた事よりも、現在地から駅までの移動日数とか、当たり前に計算された事に、改めて恐怖を感じた。
現在地を把握されてる。これも以前からだけど、こう当たり前に話されると、やっぱり恐怖だ。
しかし、海岸の街…つまり、海!
初めての海!しかもヤシンと!←俺もいるよ(シキミ)
行きたい、いや、行くに決まってるじゃないか!
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