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見えない猫
大学への入学が決まり、僕は上京した。実家はお世辞にも裕福とは言えず仕送りは殆ど期待は出来ない上に初めての一人暮らし。
付きまとう不安を胸に僕は下見もろくにしないまま借りた安いアパートの前に服だけを詰め込んだ大きな鞄を肩にかけ、立ち竦んでいた。
大学への書類を提出ついでに不動産屋に部屋の写真を見せるだけで押し切られるように借りたアパートは思っていたより古く汚い。だが、今更他のアパートを借りる事も出来ないため諦めるしかない。
「…都会は怖い…。」
人の良さそうな不動産屋の顔を思い出せば、小さく愚痴る。アパートの前に立ち竦んでいてもどうにもならないので、取り敢えず自分の部屋へと足を進める。
一階の一番奥の部屋。日当たりは良さそうだし、外観は古いが中はそうでもないかもしれない。そう、気を取り直してポケットから不動産屋から渡された鍵を取り出す。年期が入っているドアノブへと鍵を差し込みゆっくり回す。
かちゃりっと小さな音で鍵が開いたのが分かった。ゆっくりとドアを開ければ、やはり日当たりは良いようだ。電気をつけていないにも関わらず、室内は思ったより明るい。それに外観よりは室内は綺麗で小さなキッチンまでついている。
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