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俺の問いに、彼女は端的に答えた。
「いい兄貴なわけないじゃん」
頬を掻きながら、そっぽを向いたまま。
相変わらず、素直じゃないな。最後くらい素直になってくれればいいものを。
夕陽はもう消えかけのろうそくのようで、わずかに地平線に光が見えるだけだった。これが、最後だろう。
彼女の正面へと移動して、目が合うようにしゃがむ。
そういえば、いつも喧嘩をしたときは、こんな感じだった気がする。目を合わせて、その頭を撫でてあげながら謝るのだ。
「こんな兄でごめんな。でもさーー」
頭へと持っていった手は、彼女のぬくもりを捉えることもできず、すり抜けた。最後くらい、妹に触れさせてくれてもいいものを。
こんな状態にしたなにかに悪態をつきながら、俺は最後の言葉を愁にこぼした。
「俺にとってお前は、自慢の妹だったよーー…」
夕陽が沈むのと一緒に、俺はあの世へと送り出された。
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