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降り注ぐ月光が握る刃に強く反射する。その鋭利な刃物を目にした彼は、僅かに動作を停止させ、咄嗟に突き出された彼女の腕を利き手で掴んだ。
直後、彼は輝く琥珀色の瞳を大きく見張り、簡単に弾かれた自身の左手と、迫る刃物を目で辿る。眼前の映像がスローモーションのように流れる中、鋭く光るそれは彼の左腹部へと鈍い音を立てて突き刺さった。
「……っ!」
肉を裂く生々しい音に、私は思わず目を瞑った。
血液が滴り落ちる銀色の刃を、栞那さんは茫然と見つめている。
やがてその表情は正常な意識を取り戻し、恐怖に色を変え、甲高い悲鳴を挙げながら恐ろしいものを払い除けるように刃物を地面に落下させた。
壱弥さんの身体がぐらりと揺れた。
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