「だいじょうぶ!」

1/1
前へ
/10ページ
次へ

「だいじょうぶ!」

 森の広場に、動物達が集まっています。  広場の一角には、大きなツリーが立っています。  白い花と、赤・青・黄色の木の実をまとって、キラキラ光っていました。  広場の一辺に、テーブルがいくつも並んでいます。  あるテーブルには、野菜がゴロゴロ入った温かいシチューがあります。  あるテーブルには、ベリーをたっぷり挟んだふわふわのケーキがあります。  動物達は、好きな料理を食べて、そのおいしさに思わず頬を押さえました。  その反対側には、ステージがあります。  次の演目の準備をしているので、幕が下りていました。  あるウサギは、とっておきのチョッキを着て来ていました。  あるキツネは、お気に入りの髪飾りをつけて来ていました。  みんながオシャレをして、ツリーに負けずに輝いています。  今日は、冬のパーティでした。  森中の動物が参加して、楽しんでいます。  カランタラン、とハンドベルが鳴って、ステージの幕が上がります。  みんなが、パチパチと手を叩きました。  ステージの上には、サングラスをかけた動物が四人。  「パパー!」と小さな男の子の声がしました。  真ん中にいたモグラが、その声の方へ手を振りました。  ***  さて、そのステージの裏に、子どもが14人集まっています。  ドングリのボタンのついた、おそろいの赤いポンチョを着て、身を寄せていました。  ぷるぷると震えているのは、寒さのせいではありません。  このポンチョは、暖かいのです。  緑のベストを着たキツネ先生は、子ども達の様子を見て、苦笑をこぼしました。  そこに、白い帽子を被った大きな影と、小さな影が近づいて来ました。  後ろから、ちょっと小さな影もついて来ます。  大きな影は、クロクマでした。  カップのたくさんのったお盆を持っています。  ちょっと小さな影は、白ウサギでした。  クロクマの後ろに隠れて、ちらっと顔をのぞかせます。  小さな影は、キタリスでした。  子ども達の前に立ち、声をかけます。 「ハチミツがダメな奴はいるか?」  子ども達はみんな、首を横に振りました。 「ミルクがダメな奴はいるか?」  子ども達はみんな、首を横に振りました。  それを見て、キタリスは、ふむふむとうなずきました。 「差し入れだ。あったまるぞ。」  キタリスがそう言うと、クロクマと白ウサギは、子ども達にカップを配りました。  白ウサギが、キツネ先生にもカップを渡します。  カップの中身を一口飲んで、子ども達は顔を見合わせました。  誰かが声をあげます。 「先生がくれたキャンディと、同じ味だ!」  うんうん、とみんなその言葉にうなずきます。  そして、カップをかたむけて、こくこくとホットミルクを飲みました。  カップが空になると、子ども達はみんな笑顔になっていました。  もう、誰も震えていませんでした。  おしまい 48e894be-a16f-42c2-a65d-6f7ab6b3afa7
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加