D坂

「うん。それがさ。よく言うよね。ジケンセー。
　それがないってことになるらしいよ。それだと騒ぎにならないってネットで誰かが書いてた。
　今さあ。ジドーギャクタイとかカイゴがどーとかいうヤツ。色々あるよね？　ミンジとか言うんだっけ？
　で、それぞれにさ。家庭の事情っていうのがあるからケーサツもカイニューを嫌がるんだって。
　それと同じみたい。ジケンセーがないってことにしたがるのかも知れない。
　その方が楽だから？　変な話！　ハハッ！」
「ふうん。変だけど。ホントーなら、やっぱり怖いよ。それ。
　だって犯罪じゃないなら。ホントーに今この瞬間までいた人がーー消えちゃうんでしょ？
　ホラーそのものだよ、それ。
　一体どこに消えちゃうわけ？　それがホントーなら」
「さあ？　噂だし。アタシだって詳しくないし。
　この辺で、そんな噂があるとかないとか」
「ふうん。噂でもゾッとするよね。
　なんだかイヤな感じだよ、それ。
　もし、自分がそんなめに遭ったら・・・。
　あれ？　結衣？　
　ふざけないでよ。
　もう、急にどこに隠れたわけ？　
　まだ昼間だからイイけど。変な話を始めて。変な雰囲気にしてーーかくれんぼ？　
　やめてよ。幼稚園児や小学生じゃないんだから！　
　こんな坂の途中の道路で。何、始めるの。
　ねえ。ホントにやめて。いいかげんにして。
　怒るよ！　
　マジだよ！
　聞こえてるんでしょ？　
　どこにいるのよ。
　結衣！」