D坂

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   土地の素封家が語る①  D坂の・・・あの一帯の住宅地について?  そんなことをわざわざ聞くために当家へ?  ネットの噂? 呪われた住宅地? ほう、そんな噂があるのですか?  色々とお調べになって。私ーーというより、あの山を売った当時の共同保有者にまでたどりついた、と。  なるほど。  共同保有者だった家は、みな絶えて。残っているのは確かに私ーーというより、当家くらいかもしれません。  それで・・・私は何をお話しすればいいのですかな?  録音? ああ、かまいませんとも。  D坂住宅街などともうしますが・・・その名称はごく新しいのです。私が子供の時分までは、たんに『お山』と呼んでいました。  現在の地図で、どこからどこまでが、その『お山』にあたるのか。それは私にも分かりません。  最初の造成時にそれはもう形を変えてしまいまして。  あの『お山』の背景に通じていた者は。半分は造成を恐ろしいと思い。半分は期待をしていた。  何を恐れて、何を期待していたかとおたずねになる?  『お山』をあえて切り崩すことでーーあそこにわだかまる『何か』もなくなってしまうのではないか。古風な表現ならば浄められて。清浄な土地になるのではないか。そんな期待を。  恐れの方は・・・。  ああ、何を言っているのか分からない。当然です。  あの『お山』の因縁ーーそう言ってよければーーは、ずいぶん昔にさかのぼるので。  
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