D坂

6/30
前へ
/30ページ
次へ
   D坂一丁目 路上にて② 「そんなに泣きじゃくっていてもね。  もっと分かるように話してくれないと。  友達が急にいなくなった。そうだよね?  不審者・・・怪しいヤツに車に連れこまれたとか。どこかに連れていかれたーーそういうんじゃない、と。  いつものように学校から・・・市内のK市立中学だよね。  いっしょに下校の途中で。  話をしながら、このD坂にさしかかった。  喧嘩をしていたわけじゃない。小学校からずっとその子と親友で。このあたりも数え切れないくらい通っていた。  ああ、今日はちょっと遠回りをしていたのか。それでも、この辺は知らない道でも何でもない。  そうだったよね。  それで・・・。  何かーー怖い話をしていたんだっけ。  で、その途中で友達・・・結衣ちゃんか。突然、姿が見えなくなったと。  最初は結衣ちゃんがふざけていると思ったんだよね。  その辺に隠れて。君を驚かそうとしていると。  よくあるよね。物陰に隠れて大声を出して驚かすってヤツ。  ところが、いつまでたっても出てこない。  というか、この坂の両側は住宅が並んでいてーー隠れる場所なんか、ほとんどない。自動販売機のたぐいも見当たらないくらいだ。  変な言い方だけれど、本格的に姿を消すなら知らない家のーー敷地内に入らなくちゃならない。ん。分かるよ。それはね。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加