砕けた透明

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― ちゃんと前見て ― そう言われた気がして、交差点を渡りきったところで振り返った。信号が点滅し始め、慌ただしくなる人々の奥で、なびく髪を見た気がした。けど、人が消えた交差点の向こうにそれはいなかった。 「どうしたの? 何かあった?」 いろんな人が行き交う場所でも、私は自分の聞くべき言葉を聞ける。何かに惑わされることなく、大切な人の言葉を聞ける。 立ち止まった私に声を向けてくれる人がいることが、どんなに嬉しいことか。 だから、私も声を出す。 自分をわかってもらうために。 ただ、築き上げた色とりどりの壁も私の一部には変わらないから。 「お待たせ」 待っていたのは『友だち』『大好きな人』『彼』『家族』一体誰でしょうか?
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