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砕けた透明
無知は罪かと言われれば、諸手を挙げてそうだと言いきれない。知りすぎて自分を壊してしまうくらいなら、いっそ知らない方が良いだろう。
多種多様な人々が闊歩する交差点。
その出発点に立って、足を踏み出せるのを待っている。この時間帯は下校時間だろうか、同じ制服の少女と女性の間で揺らぐ人混みに混じって、一際目をひく女性がいた。
『ガラスのハート』
彼女は、誰とは認識しない人がすれ違いざまに口にした言葉を耳に入れ、「ああ、そう」と一度噛みしめた後、他人事だと、少し笑って言葉を流した。
数年前の彼女、いや『少女』なら
その意味を調べ
何がそう思わせたのかを考え
相手が自分をどう思っているのかを考え
寝る前に思いだし、一人声にならない呻きをあげただろう。
時には夢の中で言葉が待ち構えていたかもしれない。
例え友人や家族から発せられたその言葉が、少女自身に向けられたものではないとしても、だ。
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