砕けた透明

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『少女』というものを守っていたのはガラスの壁だ 。それは守っているのにも関わらず、『少女』自身を隠しはしない。(へだ)たりだけ作って終わりだ。 その壁は当然(もろ)く、ちょっとしたことで揺れ始める。 自分が知らない話をしていた。 (いや、聞けばいいじゃん、教えてーって) 先に帰ってた。 (いやいや、あんた委員会にカバン持って行っちゃったじゃん) グループに入れなかった (いやいやいや、作るの3人グループだから! 私ら4人だからじゃんけんしたじゃん) 少女を(さと)そうとする誰かの声も(むな)しく、ガラスに一度ヒビが入ると、負のスパイラルだ。 同じところに当たれば(じき)に砕けるし、別のところに当たっても結局(もろ)くなっているガラスは壊れてしまうだろう。 それでも持ちこたえていた少女のガラスの壁。 だが、ヒビが大きくなり、やがて一面をおおう白い蜘蛛の巣になって始めて、少女は初めて声をあげようとしたのだ。 でもそれを誰かに届かせるための一歩がとても、重い。 躊躇(ためら)ううちに、蜘蛛の巣は脆い部分から徐々に削られ始め、白いガラスの粉になり山を作り始めた。 焦った少女は、今までいた場所から離れ、あわてて白い粉を再び固め始めたが、ただ白い壁が出来るだけで元の透明なガラスにはならなかった。 それでも最後の足掻(あが)きを見せた『少女』が白い壁を作り続けていると、頭上にある蜘蛛の巣は、いつもなら、びくともしないほんの小さなカゼにつつかれて簡単に砕け落ちた。 そこで彼女は始めて気づいた。自分のはずの少女が、自分が作る壁の向こうに(いま)だいることを。 そして自分は少女を全て囲ってしまおうとしていることを。 それでも白い壁を作り続けた彼女は、出来上がった壁を見て、もう2度と前のように彼女には会えないかもしれない、そう涙を流した。
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