0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここにいるの?」
そう言って、中に呼びかける人物がいた。
この人は一体何を掘り出そうとしているのか。
― やめて! ―
あわてて侵入者の顔をみると、それは見覚えがある人物。
― ああ、一番知られたくない人に ―
完璧な色とりどりの自分しか知らない、そんなあなたに知られたら、もう2度と会えない。
― だから、早く出ていって! ―
「大丈夫?」
聞きたくないそんな言葉。
「……」
やっと黙った。
でも、いつまでそこでこっちを見てるの?
また口を開いた!
「 」
貴方がなんて言ったのか
それは頭に残らなかった。
でも
気づいたら泣いてる自分がいた。
そして自分が作ったはずの壁は半分壊れていて、中の少女が顔を覗かせていた。
目があってニコッと笑うと少女は大きくなり私と同じ顔になった。
私なのに私じゃない
少し気弱なワタシ。
心配性なワタシ。
そんな事で泣くの? って自分でも思う涙もろいワタシ。
一言目をなかなか切り出せないワタシ。
自分より周りなワタシ。
でもそこにあったのは、作り上げた白い壁には塗ることができなかった、純粋な白。
色とりどりに塗った上からだと真っ白には塗れなかった純白。
作り上げた色とりどりの壁で自分を叱咤して追い詰めていた私を、ずっと心配してくれたワタシ。
ワタシがいてくれたから今ここでブレーキがかかった、自分で作った壁で押し潰される前に。
ワタシと私が一緒になると、あなたが何て言ったかを思い出した。
「「やっと会えた」」
あなたとワタシがそう言うから、自然と心から言葉が出てくるの。
「それは私のせりふだよ」
最初のコメントを投稿しよう!