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クルマのラジオから懐かしい歌が流れてきた。
歌詞を覚えたくて、繰り返しテープを聞いた。
歌い出したあたしを見て、あなたが笑った。
「昔、この歌が好きだって言ったの・・・覚えてる?」
「覚えてるよ。俺のクルマからカセットテープ、持って行ったじゃん。」
「あ、そうだったね。借りたまままだ返してないね。」
クルマが赤信号で止まった。
「取りにくる?」
「んー。」
クルマが動きだした。
「今度取りに行くよ。」
「わかった・・・」
「結婚の承諾もらいに行ったあと、カセットテープ返してもらうから。」
サラッと言ってたけど、顔は真っ赤になっていた。
あたしたちは来年の春、婚約して・・・再来年の春に結婚する。
長い長い片思いを続けて、ようやく両思いになれた。
クルマの中は、ふんわりと優しい空気に包まれた。
「りょうちゃん、幸せにしてね。」
カレは固まっていた。
「・・・幸せにするよ。」
顔をまた真っ赤にするカレを見て、あたしは笑ってしまった。
「誰を幸せにするの?」
「・・・リエを幸せにするよ。」
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