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この家には天井がなかった。
白い雪は僕たちを刺すように降ってくる。でも兄さんと姉さんがいるから、あったかいんだ。
朝。天井からのぞくおじさんの顔。
「おまえ、かわいいな」
おじさんはそう言い、白ネコの兄さんを抱き抱えて、去っていった。
しばらくすると、香水の匂いがする女の人の手が入ってきて、茶トラの姉さんを掴み上げた。若い女の人だった。
その人は僕に「ごめんね」と何度も謝って、姉さんを連れて行ってしまった。
ひどく寒い夜が続いた。家にあった缶詰はもう匂いもしない。
兄さんたちはなにか食べてるのかな。
僕は黒いから嫌われてるの……。
その夜の星はぼんやりしてきれいじゃなかった。
僕はもう死んじゃうのかな……。
目が覚めると、天井のある部屋の中だった。僕の前には、あたたかいスープとおばさんの笑顔がならんでいた。
「きょうからウチの子よ。よろしくね」
僕はその時、はじめてニャーと泣いた。
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