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各駅停車ならぬ各階停止で、いつの間にか箱の中にはぼく一人となって辿り着いた屋上階。
扉が開くとそこには――
「ワッ!」
「……」
ブワッと冷たい風が全身を襲うと同時に現れたのは、大きな口を開けた女性。
驚くというよりも、本当に自分を待っていたことに拍子抜けしたぼくは、彼女の顔を凝視したまま立ち尽くした。
「え? あれ? ちょっと、ちょっと、ちょっとぉぉぉ!」
急に慌てだした彼女は、壁にある乗降用押しボタンを押した。
閉まりかけた扉が、再び最大まで開く。
「どら焦ったわー」
前髪パッツンのロングヘア。
制服を身に纏っているところから、一つ二つは年が違うかもしれないが、同世代だと分かる。
首に巻いたマフラーの色はド派手なピンク。
スカートの丈は少々短めではあるが、見た目だけでいえば、清楚系に分類されるであろう彼女には似つかわしくない……いいや、聞き慣れない言葉が発せられると同時に、腕を引っ張られた。
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