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「うわっ」  狭い空間から勢いよく外へと飛び出すと、彼女はカッカッカッと豪快に笑った。 「わたしの顔にびっくりして、あのまま下に降りる気かと思ったてぇ~」  自己紹介をする前から、やけに慣れ慣れしく、人の肩をバシバシと叩いて笑う彼女に、つい疑問が口から漏れた。 「いまの言葉遣いって……」 「しまった! 君が焦らせるから方言出ちゃった」  小さく舌を出す彼女をよくよく見れば、ここら辺では見たことのない制服。  ということは、どこか遠方からわざわざこの病院にやってきたのだろう。 「誰かのお見舞い?」  見たところ、元気そのものといった彼女。  身内か親しい人の見舞いに来たと推測したぼくは、思ったまんまを口にした。  案の定、彼女は首を縦に振ると、「そうなのっ! 今日から“お母さん”がこの病院に入院したんだ」とあっけらかんとした表情で言った。  その答えに僅かに動揺するぼくを余所に、彼女は続けた。 「本当は冬休みに入ってから付き添いに来るつもりだったんだけど、お父さんは仕事だし。わたしはなら二学期のテストも終わっているから、事情を説明すれば残り数日くらい休めるっていうわけで一緒についてきちゃったんだよね」  照れ臭いのか、視線を斜め下に下げ、こめかみを掻く彼女の耳は赤かった。
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