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「へえ……でも、地元の病院じゃなく、なんでわざわざここに?」  ぼくの問いに目を真ん丸にさせた彼女は、「どうして遠くから来たってわかるの? やっぱりさっきの方言? 方言が田舎っぽかった?」と僕の肩を揺さぶった。 「違うから落ち着いて」  肩に置かれた手をゆっくりと外した後、ぼくは彼女の制服を指差した。 「方言くらいなら親の転勤で転校してきた子だって当てはまるだろ? でも君の場合は……」 「あ! そっか。学校に届け出だして、そのまんまこっちに来たから、わたし、制服のまんまだったや」  自分の着ている服を確認した彼女は、再びカッカッカッと女の子らしからぬ声で笑った。 「うちのお母さんの実家は、この街なんだ」  笑い終わった後で彼女はぼくの質問の答えを言った。  なるほど。  病気の時は誰だって心細い。  旦那と一緒に住んでいるところにだって、義両親なり、知人友人なりがいるだろうが、入院の世話をしてもらうとなると、親兄弟なり、気の置けない友人の方がいいに決まっている。  特に、旦那自身が付き添えないのなら尚更だ。  ようやく合点がいったぼくは、ふと思った。
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