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「新学期始まったらどうするの?」
「多分、その頃には退院できるっぽい」
「ってことは、そこまで重い病気じゃ……」
「ないよー」
それを聞いてホッと胸を撫でおろした。
まあ、考えてみれば、死に繋がるような病気だったら、彼女だってこんなに明るく振舞えている筈がない。
出会ってまだ、たったの数分ではあるが、少々変わっているとはいえ、彼女は家族と仲が良く、母親想いの優しい子だということが理解できた。
「羨ましいよ……」
心の中で思っていたことが、思わず口から出ていたらしい。
キョトンとした顔をしてぼくを見上げる彼女に、慌てて否定する。
「いや、お母さんが入院していることに関してじゃないよ」
「はははは。それぐらい分かるよ。流石に他人の病気を羨ましがる人なんていないしね」
ぼくの失言を責めるわけでもなく、笑いとばす彼女の懐の深さを感じてなのか。
それとも、赤の他人である彼女になら、自分の胸の中に閉じ込めてきた想いをぶちまけても害がないと思ったからなのかは分からないが、自分が何故「羨ましい」と思ったのかを、誤魔化すことなく自然と話し出していた。
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