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「いや。学校を休んでまでお母さんの付き添いをするだなんて、本当に仲がいいんだなと思ってさ」
冬の寒空の下。
しかも、夕暮れ時の屋上に出る物好きなんて、彼女ぐらいなものなのだろう。
周囲をチラリと見渡せば、綺麗に剪定された木々や花壇の間にベンチがところどころに設置されているのだが、そのどれにも人は座っていない。
ゆっくりと一番手前にあるベンチへと歩み寄ると、ベンチの周囲に植えられた垣根が、ちょうど風よけになっていた。
ここなら落ち着いて話せる。
腰を下ろすと、黙って後ろをついて来ていた彼女も隣に腰かけた。
「名前も知らない君に話す事じゃないとは思うんだけど……」
一応、そう前置きすると、彼女は真剣な話だと察したようで、スッと姿勢を正した。
もっと軽いノリで聴くだろうと思っていたぼくにとって、これは意外だったが、気持ちの切り替えが上手い人なのだろうと、深く考えることなく続けた。
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