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「……ふっ……ふふふ……あはははははは」  張り詰めた空気を打ち破るように笑いだした彼女。  突然の奇行に唖然とするぼく。  ひとしきり笑うと、彼女は人懐っこい笑顔に戻っていた。 「他人行儀って言ったって、仕方ないよね。だって、お父さんとは結婚したかもしれないけど、わたしからしてみたら、同じ家に住んでるってだけで、実際、赤の他人だもの。お義母さんだって、いきなりこんな大きな娘が出来たんだから、戸惑うのも無理はないし、“いいお母さん”を演じるしかないじゃない?」 「え?」 「だーかーら。要するに、ちゃんと母親業をしてくれているだけ、うちらは有難いっていうこと」 「あー……」 「それに、実の子供を想わない母親なんていないものよ」  どこか寂しげに付け足した彼女の言葉は、ぼくへ向けてというよりも、自分自身に向けて言っているようであった。
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