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「これは、空?」 「ん? どれ?」  散らばっていると思っていた紙は、どれも、風で飛ばされないよう一枚一枚に何かしら重しが乗せられていた。  屋上公園内にある小石だったり、彼女の筆箱だったり、鞄だったり。  それらを一つ一つ取り除き、一枚一枚回収していた彼女が小走りでやってきて、ぼくの手元を覗き見た。 「ぶっぶー。不正解! それは海でーすっ」  彼女はぼくから画用紙を奪うと、それを180度回転させた。 「上下逆さまに見るからそう見えたんだよ」  彼女の言う通り、雲に見えていたものは白波へと変化し、あっという間に美しい海になった。 「見る角度を変えれば、見えている世界も変わるわけか……」  なるほどと唸りながら絵に見入っている間に、彼女は自らが並べた(散りばめた)絵を拾い集めていた。
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