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「ふふふ。君って本当に面白いね」  目を細め、愉快そうに笑う彼女は首を横に振った。 「あんな紙屑。みんな、ほんの少しだけ視線を向けるだけで、すぐに興味を失せてコートなりマフラーなりに顔を埋めて下を向いて去っていくだけ。だーれも、なーんにも反応がなかったわ」 肩を竦め、「ほんと、つまらない人達よね」と文句を言いつつ、一歩一歩、ゆっくりとこちらに近付いて来る。 「でもさ。君だけは、何故かあそこで立ち止まって、顔を上げたんだよ」  目の前までやって来た彼女は、ぼくを見上げた。 「しかも、その後、カメラであの景色を撮っているのを見てさ。“ああ。この人はわたしと同じだ”“この人と話したい”って直感的に思ったの」
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