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ドキリとしたのは、吸い込まれるような黒い瞳にジッと見つめられたからだけではない。
ぼくもまた、あの情景を生み出した彼女と話がしたいと思っていたからだ。
家族のことといい、今の話といい、性格も性別も全く違うのに、どこか似通う部分がある彼女のことをもっと知りたいと強く感じた。
「ただ、君の話を聞いて思ったんだ。やっぱり、わたしと君は違うんだって」
否定的な言葉ではあるが、ぼくは何故かショックを受けることはなかった。
それはきっと、彼女が好奇心旺盛な子供のような顔をしていたからだろう。
彼女は嬉しそうに口角をあげた。
「だってさ、わたしはあの時、雪を降らせようと思って屋上から紙屑を飛ばしたのに、君は桜吹雪だと思ったんでしょう?」
ここでようやく、ぼくは彼女が何を言いたいのか理解した。
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