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「この一瞬を永遠に」  ひっくり返せば、そこにはぎこちない笑顔の葉山と、満面の笑みを浮かべたわたしが、二人で一つの指フレームをつくり、そこを覗き込むようなポーズで写っていた。  これは、彼に誘われて、例の秘密基地(暗室)に連れて行ったもらった時のものだ。  カメラを通じて、初めて彼の見ている世界を知ることが出来たわたしは、夢中になってシャッターを押した。  嬉しくて。  楽しくて。  そして、はしゃいで。  自分とは違う、彼の見ている景色を少しでも感じることが出来た記念にと、無理を言って一緒に撮ったものであった。 「アンタへのラブレターよ」  小日向が言っていた言葉が頭の中で木霊する。  彼女の言葉を、何十枚にも及ぶ写真や、彼からのメッセージによって正しく読み解くとするならば、わたしが彼の表情や仕草をずっと描き留めている間、彼もまた、わたしのことを捉えていたのだと思うと恥ずかしさと同時に、嬉しさがこみ上げてきた。  彼とわたしは互いに同じものを見ているようで、違う景色を見ていた。  けれど、そこから生まれた気持ちは、同じものだったのだと、ここで初めて気が付いたのだ。  途端、胸の奥底から色々なものがこみ上げてきた。  涙がとめどなく溢れ出る。
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