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「わたしへのリハビリはまだ続行中っていうわけね」
小日向は葉山がわたしを通じて色んな世界を見たいだけだと言ったが、そうじゃない。
角膜移植をしても、完治しないかもしれない目の事を知った彼がわたしに、色んな世界を見せたいと思ったのだ。
もともと自分が見ていた景色。
そして、見えなくなっていく中で感じるもの。
手術後、徐々に変わりゆく視界。
彼の細胞の一部が自分の体と混じり合って見えてくる世界。
ああ。
そうだ。
見方を変えれば世界は変わる。
じゃあ、見え方が変われば――当然、感じ方だって変わるのだ。
時間は限りあるものではない。
いつ何時、何が起こるかも分からない。
わたしは彼の想いを深く胸に刻み、そして、「この一瞬」を大切にしようと誓った。
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