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でも、ただそれだけだ。
他にはなにもない。
ただ一つだけ、ただ綺麗なだけの絵と違うところは、その独特な色使いなのだが、それをプラスに加算したとしても、魅力的かと問われれば、言葉に詰まる。
それは何故か。
彼女の絵を見ても、胸に響くものや、何か訴えかけてくるようなものが一枚もなかったから。
ぼくはどう答えるべきか悩んだ末、正直に思ったままのことを伝えた。
「やっぱりわたしが見込んだだけのことはあるね」
途中で口を挟むことなく、最後までぼくの感想を聞き終えた彼女は、パッと明るい表情を見せた。
「これで“上手だね”とか言われたら、君に失望するところだったよ」
他人からの評価など気にしないぼくが、彼女のその言葉を聞いて、内心ほっとした自分が恥ずかしくて、「なんだよ。ぼくがそんな優しい人に見えたの?」と悪態をつけば、「全然。君ならそう言ってくれると思っていた」などと言って、カッカッカッと笑った。
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