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「でもさ。だから破り捨てたんだよね」
「え?」
スッキリとした顔をしている彼女に、“まさか”という気持ちが込み上げる。
「ほら、わたし。雪を降らせたいって言ったでしょ? 何の意味もなさないこの絵も、雪のように溶けて無くなってしまえないいのにって思ったの」
「それはどういう……」
戸惑うような声が自然と漏れる。
彼女の絵からは何も感じられなくても、彼女自身からは絵への強い情熱が伝わる。
それなのに彼女が言おうとしている言葉は――
「これでも結構いろいろな賞を獲ったり、有名な画家に評価されたりもしてきたんだけどね。ここんとこ、スランプに陥っちゃって……思うような絵が描けなくなったんだ」
「それで、スランプを乗り越えようと?」
ぼくは彼女にそんな気がないことを知っていながら、わざと問い掛けると、案の定首を横に振った。
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