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 昨日はとても不思議な体験をした。  他人に無関心なこのぼくが、見知らぬ女の子と仲良くなったのだから。  多分、それは彼女が「葉山実」ではなく、ぼくそのものを必要とし、呼んでくれたからなのだろう。  彼女は遥川(はるかわ)(ゆき)と名乗った。  年は自分と同じ十七歳。  高校二年生だ。  気が緩んだり、咄嗟に出たりする方言からおおよそ検討はついていたけれど、彼女は名古屋生まれの名古屋育ち。  別れ際に連絡先を交換したものの、あれから朝になってもメールの一つもない。  思い通りの絵が描けるようになるリハビリを手伝えと言われたものの、次の約束すらしていないのだから、彼女から何かしらアクションがあると思っていたぼくは、一晩中、スマホが気になって眠れなかった。
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