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Ⅰ
「さみぃな……」
この地域は関東山地のお陰で、北からの季節風が直接入ってこない。それでも、寒いものは寒い。
マフラーに顔を埋め、ズボンのポケットに両手を突っ込む。
季節は十二月中旬。
手袋や厚手の靴下を履いていても、手足が悴み凍えそうだ。けれど、冬はこれからが本番である。寒さのピークに向かって更に気温が下がっていくのかと思うと、正直げんなりした。
家から学校までの間には、武家屋敷が集まっていた風情ある小路を通る。
今は閑静な住宅街ではあるものの、当時の趣がところどころ残っているだけでなく、何十本と植えられた桜並木道が東西に真っ直ぐ伸びていた。
春になると薄桃色の花たちが道行く人を歓迎してくれ、夏は鮮やかな緑の葉が繁り、刺すような日差しから守ってくれる。
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