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 ただし、冬はそうはいかない。  西から吹き抜ける風を妨げるものは何もなく、真正面から通行人に向かって体当たりをかましてくる。  心地よい海風だなんて呑気な台詞を言えるのは、観光客ぐらいなものであろう。  通い慣れた道を白い息を吐きながら足早に進む。 「ん? なんだ?」  風を避けるため、俯き加減でいた僕の足元に、薄いピンク色をしたものが舞い落ちた。  それも一枚、二枚ではない。  小さく渦巻く風に乗り、くるくると回る小さな花弁。  どこから飛んできたのかと思わず顔を上げると、ぼくは自分自身の目を疑った。 「桜吹雪?」  まるで春の終わりを告げるように、数多の花びらが右から左へと流されている景色が広がっていた。
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