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「嘘だろ……」  山から緩やかに下りてくる冷たい空気と、真正面から顔面を襲う風とがぶつかり合い、上へ上へと吹き上がる。それと同時に、大地に落ちたはずの小さな花片も、再び息を吹き返したかのように舞い上がる。  つられて視線を空へと向けた。  やや灰色がかった空をキャンパスに、寂し気な枝がいくつも目に飛び込んできた。  慌てて左右を見渡せば、道の両側に立ち並ぶ木々は全て桜の木。  当たり前のことなのだが、そのどれにも花どころか蕾一つすらついてはいない。  季節外れの花吹雪に胸を高鳴らせたぼくは、咄嗟に鞄の中から常に磨き上げている黒く鈍い光沢を放つ相棒を取り出した。
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