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 たまたま運よく人通りも少ない。  車にだけは気を付け、狭い道のど真ん中でカメラを構えた。  ファインダーから覗くと、より一層幻想的な世界が広がる。  淡いモノトーンの中で、ほのかに頬を染める妖精たちが楽しげに舞い踊る。  瞬間をおさめようと夢中になってシャッターを切る。  数十秒――否、数秒ほどで淡く色づいた世界は終わりを告げた。  接眼部から目を離すと、小さな黒いボディの上に、一枚の花弁がついていた。  よく見ると、それは小さく千切られた紙。 「なんだこれ?」  人差し指と親指で壊れないよう摘まみ上げた。
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