2人が本棚に入れています
本棚に追加
夢の中で、普段は押し込めている感情が溢れ、噴き出して、勢いよく流れ出した。
いつもは、手を化物のように伸ばしても、伸ばしても、指先にすら触れることの出来ない最愛の花が、すぐ目の前で咲いていた。
まるで誘惑しているような、甘い香り。
しかし、決して触れさせてはくれない。
そう
欲望は満たされる事はない。たとえ夢の中であっても……。
自分の求める花は、甘い香りを残し、再び深い闇の中へと吸い込まれた。
決して手に入らない、その花を求める自分が、健気にも、惨めにも思えた…。
何処も見えていない瞳から、欲望の塊が溢れ、頬を伝うそれを、冷え切った氷のような指でそれを掬い、何故か恐怖を感じた。
鏡に写ったそんな自分の姿は、悔しいほどに妖艶で。
そんな自分の姿に、失望した。
最初のコメントを投稿しよう!