隙間

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天井からぶら下がる紐を引いて点灯させるタイプの、昔ながらの照明。丸形の蛍光灯が大、少と二つ取り付けてあるのだが、両方ともが一緒に切れた。 二つの蛍光灯が同時に寿命が尽きることなどあるのだろうか? 偶然の一言ではとても片付けることが出来ない。水面に落ちた墨汁がじわじわと広がる様に恐怖が竜二を染めていく。 台所からガラス戸を通し射し込む15Wの明かりでかろうじて暗闇は避けられた。だが普段、補助的な役割しかしない光は弱々しく、それが今は憎らしく思えた。 首筋から背中をつたい足下へと悪寒が這う。襖を開けてはいけないと身体が訴えるが、これまでにかけた手間と、何より好奇心が竜二を突き動かした。 呼吸が荒くなり震える手でスマホのライトを起動させた。光が隙間を照らすのと同時に押し入れの中から何かが腐ったような臭いが鼻を突いた。反射的に右手で鼻と口元を覆うが、竜二の胃からは酸っぱいものが込み上げた。押し入れから離れようと後ずさるがそこで身体が固まる。 押し入れの上段、襖の真ん中辺りから襖縁を這うように、隙間からすぅっと、何か青白い物が現れたのだ。これまでは感じる存在だったものが、物体として現れ視覚を通すことで、恐怖は一気に加速した。 青白いそれは最初、足の太い蜘蛛の半身を思わせた。足の一つ一つが個別の生き物の様に襖縁に沿って蠢いている。やがて何度か上下に這わせた動きが竜二の目線の高さでピタリと止まった。──指だった。 上から小指、順に人差し指までが押し入れの中から襖縁を掴む。丁度中から外に出るため、襖を開けようと手を置く位置。ナニカが出てこようとしていた。
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