#2 air

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こいつは自分がやりたいからやるんだと言ったが、何の見返りもなくそこまでしてくれるというのは、俺が気持ち悪くて無理だった。 そこで、まずは毎週金曜日のカレーパンを奢ることにした。 そして模試で六割という目標を達成した暁には、スイパラを奢りで。 天才のプライドとやらは知らないが、この条件でギリギリどうにかウィンウィンだ、俺の気持ち的には。 「なんでそんなに律儀なん」と達規にはやけに笑われたが、普通だろう。 今までだって結構な労力を割いていたはずなのに、報酬を求めない達規の方がどうかしている。 「達規先生、優しいなー。俺にも教えて。英語と数学と化学と地理と、公民と、あと現国と古文」 「全部じゃん。佐々井はバカだから無理」 厚めの参考書を冷やかしにパラパラ捲りつつ、横から佐々井が口を挟んだ。 「言っても水島とそんなに順位変わんねーよ?」 「いやー、無理っしょ。佐々井、諺って知ってる? 馬の耳に念仏っていうんだけど」 「知ってる知ってるー。豚に真珠とも言うよねー。ってオイ!」 何だそのやりとり。アホすぎて逆に頭良さそう。バカと天才は紙一重って本当だな。 突然始まる漫才にも日に日に慣れてきた俺だが、突っ込みは内心でそっと呟くだけに留めておいた。
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