#5 roll

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「その知り合いってのは何だ! 何の知り合いだ!」 「何のっつーか、普通に男だしね」 なにぃ……と、佐々井は歯軋りでもしそうな勢いで思いっきり顔を歪ませている。 「女子大生じゃねーのか? 本当に?」 「ほんとほんと」 「年上の綺麗なお姉さんと会ってたんじゃねーのか」 「むしろそうならよかったわ」 「年上好きか?」 「年下よりは」 「女子大生っていいよな」 「でもK大よりA大のが美人多いって聞かん?」 「いつの間にか何の話だよ、お前ら」 このままでは女子大生の話が無限に広がっていく未来しか見えなかったのでストップをかけたが、案の定、それくらいで佐々井は止まらなかった。 大袈裟なほど深く息を吐いて、 「水島はいいよな、リアル女子大生の姉ちゃんがいるもんな」 また余計なことを言い始める。やめろ、達規が食いつくだろうが。 「え、水島お姉ちゃんもいんの」 ほら。 「しかもめっちゃ可愛いんだよ! くそっ……俺は水島に生まれたかった! 心の底からそう思っている!」 去年、俺の姉貴を見て以来、佐々井はずっとこれを言っている。身内をブス呼ばわりされるよりは良いが、どうにも複雑な心境になることは変わりない。 「ただのうるせえギャルだろ」 「ギャルの姉ちゃんとかこの上ないご褒美じゃねーかよ!」 「化粧濃いし、スッピン薄いぞ」 「あー、なるほど。だから水島はギャル嫌いだし女子に厳しいんかー」 達規が変なところに納得している。どうでもいいけど姉貴の話をこれ以上広げるんじゃねえ。 「お姉ちゃんの写真ねーの?」 「あるわけねえだろ、きめえ」 「じゃあ代わりに福助の写真見して」 「おー、福助の写真は死ぬほどある」 横で佐々井が「姉ちゃんの自撮りもらって俺にくれ!」とか言い始めたが、無視してスマホを操作する。 昨日撮ったばかりの最新版福助を達規に見せたら、目をキラキラさせた。達規は正しい。どう考えても姉貴より福助の方が可愛い。
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