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幼稚園の卒園アルバムにはすでに「しょうらいのゆめはサッカーせんしゅ」と書いていた。 俺はサッカーが好きだ。めちゃめちゃ好きだ。 そうじゃなければサッカー部になんてそもそも入っていないだろうが、サッカーより好きなものがないから、毎日サッカーができる部活というシステムはなんて素晴らしいんだと思っている。そのくらい好きだ。 そんな俺にとって、定期考査はこの上なく憎い。正確に言うと定期考査前のいわゆるテスト期間というやつが憎い。 理由は勿論、部活がないからだ。 勉強したくないとかじゃなくて、サッカーができないのがとにかく嫌なだけ。 そういうわけで今日の俺は気分が上がりきらずにいる。 「水島ぁ! 今のは一回出すとこだろっ」 後方から工藤先輩の鋭い声が飛んだ。俺の放ったシュートが弾かれたからだ。ディフェンス二枚に塞がれて、コースがキーパーど真ん中しかなかった。 打たずにパスを回すべきだった。自分でもそう思ったので「さーせんっ」と怒鳴り返す。 期末の定期考査が来週に迫っていた。 二日間に渡る考査の一日目を含め、明日から八日間も部活ができない。今日がテスト期間前の最後の部活だ。 蒸した暑さが夕方まで引けない今の時期ではあるが、五時を回ればさすがに風も出てきて、走り回るには快適だった。 同時に、あと一時間もすれば部活が終わってしまうことを思い、雑念を払おうと自分の頬を叩く。 「っしゃ、水島ぁ、しっかり周り見てくぞ」 「っす」 額から流れる汗を練習着の袖口で雑に拭う。 先日、高校総体の県大会が終わった。結果は準優勝。決勝で負けてインターハイを逃した。 三年の先輩は、ほとんどが冬まで残る。 うちはそれなりの強豪校と呼ばれているが、全国行きを果たしたのは一昨年の夏が最後だ。つまり今の三年生が一年だった夏。 三年生にとっては次が最後のチャンスだし、俺たちの代も初の全国を目指している。 ぼんやりしている暇はない。 テスト期間明けにはまた練習試合が続くし、すぐに夏休みだ。 俺の走り込んだスペースに向かって、キャプテンの渡先輩の綺麗なパスが飛んでくる。 ディフェンスラインの裏。 フリーだ。 今度こそ決めるべく走る。ワントラップ。 右。 即座にシュート体勢。利き足のスパイクがボールを蹴る。
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