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じいやの言うことを大人しく聞いておくべきだったのか。
けれど、どうしても、危険を冒してでも、確かめたい真実があったのに。
「お兄様……」
観念した彼女が目を閉じて呟いた瞬間、奇跡は起こった。
「ごべぼうっ」
ニヤニヤ下品な微笑みを浮かべながらお楽しみを始めようとしていた山賊Aから、空気が汚く抜けていったような音がした。ついでに打撃音というか、後頭部を思いっきり殴打されたような、鈍くて痛そうな音も聞こえる。
「誰だテメー――ぶべらびゅっ!」
すぐに山賊Bの、これまた顎の辺りをしこたま下から上にかち上げられたら、こんな断末魔を上げても仕方ない気がするような汚い悲鳴と、Aと同じようなとても痛そうな音が辺りに響き渡った。
思わず閉じていた目を少女が開けると、男達二人は森の中に伸びており、「ふう、いい仕事をしたぜ」とでも言いそうにパンパンと両手を払っている青年が目の前に立っていた。
彼女がまず目を惹かれるのは、その頭である。
赤。
少女も自分の髪が赤いことには自信があるというか、散々生まれた頃から言われてきていたのだが、青年の髪の色はさらに色鮮やかで目に染みるほど。
炎だ。頭が燃え上がってる。
思わずそんな風に思ってしまうほど、見事な赤髪だった。
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