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呆気に取られている彼女に向かって振り向くと、山賊二人をあっという間に沈めた通りすがりの誰かさんは手をさしのべてくる。
少女はその手を取るか迷った。ついでに何を言うべきかも割と迷った。
「あー……えっと、こういう場合、やっぱりまずはこう言うのが正しいのかしら。助けてくれて、ありがとう?」
語尾に疑問符がついてしまうのは、ご恩を受けた箱入り娘の身分でいてあれだが、若干話ができすぎている気もしたからだ。
街道はずれた山道である。山賊相手である。こちらはいかにもわけありそうな若い娘である。それをなんか結構身なりのよさそうなイケメン(そう、頭の第一印象に埋もれたが、よく顔を見てみると尋常でないほど鮮やかな赤髪の欠点を十分補える程度の美形である)が助けてくれる。
うーん、他人事なら容赦なく萌えるが、当事者はポーッとしてばかりでもいられない。
ついさっきだって、前の町で親切そうな女の人に道を案内してあげると言われ、人を信じる心で抑えてホイホイついていった結果、いつの間にか山賊にバトンタッチされてご覧の有様になったわけで。
普段ならお人好しやミーハーの方が上回る脳天気にも、社会勉強の賜だろうか、警戒心が首をもたげてきている。
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