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はじまり
第一志望の大学へ入学できた嬉しさと、新たに始まるキャンパスライフへの期待で胸を膨らませた大学一年生の春。
キャンパス内はサークルの勧誘で賑わっていた。
「ねぇ、サークルどうする?」
私は入学式で隣になり仲良くなったばかりのユカと、押し付けるように渡されたサークルのチラシを見ながらキャンパス内を歩いていた。
「あのー…野球部のマネージャーやりませんか?」
控えめに声をかけてきたのは後に先輩となる選手の香山さん。
「マネージャーですか?」
ユカが怪訝そうに尋ねた。
「そうです。いろんな人に声をかけてるんだけど誰も相手にしてくれなくて…
ウチの部は一般的なサークルとは違って部活並みに練習してるからマネージャーの負担も大きいとは思うけど、真面目な人ばかりだし嫌な思いは絶対させませんから引き受けてもらえませんか?」
香山さんは手を合わせながら、すがるように私たちを見た。
「マネージャーをする気はないです」
ユカは軽くあしらいその場を離れようとしたけれど、その行く手を香山さんは遮り
「僕2年生なんですけど、このままじゃ先輩達に合わせる顔がないんです。話だけでも聞いてください!お願いします!!」
と、私たちを必死に引き止めた。
その様子を見た私は、香山さんがなんとなく気の毒になり
「ユカ、話だけでも聞いてみようよ」
めんどくさそうなユカを説得して野球部のブースに座った。
一生懸命説明をする香山さんの必死な様子にふたりとも断り切れず、結局一緒にマネージャーをやることになった。
それから数日経って初めて練習に参加。
私はその日、中島ユウキという男の子に出会うことになる。
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