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私とユカは更衣室でジャージに着替えてグラウンドに向かった。
「アヤは野球のルール知ってる?」
身体を軽くストレッチしながら歩くユカが聞いてきた。なんだかんだ言ってやる気満々。
「お兄ちゃんが昔やってたからちょっとはわかるけど詳しくは…ユカは?」
「私、全然わかんない。ヤバいよねー。
やっぱテニスサークルにしておけばよかったかな」
そんな話をしながらグラウンドに到着すると、ちょうど練習が始まるところだった。
なんとなく勝手にグラウンドには入りにくく、誰か近くにいないかと辺りをキョロキョロと見回す。
「マネージャー?」
背後から聞こえたその声に振り返ると、すらっとして背の高い男の子が立っていた。
「あっ、はい…よろしくお願いします」
「オレも1年なんだ。よろしくね」
「えっ?1年生なの?」
同級生だと知って、急に親近感が湧いた。
彼が中島ユウキ。
こうして私たちは出会った。
「ねえ、中島くんって○○に似てるよね」
練習を終えて更衣室で着替えながらユカが言い出した。
○○とは、ある人気芸能人。
「そうかなぁ。でも雰囲気は似てるかもね」
「絶対似てるよー。
あんなカッコイイ人がいるなら頑張ろーっと」
練習前は『モチベーションが上がらない』と言っていたユカだけど、そんな話をしていた事はすっかり忘れてやる気満々だった。
「ユカは彼氏いないの?」
「いないよー。アヤは?」
「一応いるけど…」
「いいなぁ。彼氏ってどんな人?」
高校の時から付き合っている彼の名はマサト。
高校二年生の夏から付き合い始めた。
受験を控えたふたりのデートはもっぱら図書館の自習室。そんな清い交際を1年半続け、無事ふたりとも第一志望の大学に合格。
マサトは同じく都内の別の大学へ進学した。
マサトは男性ばかりのこの部のマネージャーをやることに反対したけれど、他の人に心変わりすることはないと説得し渋々認めさせた。
こうして私のマネージャー生活が始まった。
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