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俺の予想に反して、新人マネージャーは辞めずに頑張っていた。
明るく元気な宮ちゃんはすっかり部に溶け込んで、みんなと積極的にコミュニケーションを取っていた。
一方、アヤは話しかけられるとニコニコ話すものの、基本的には黙々とマネージャーの仕事をしていた。
もしかしたら嫌々やってるのかな…アヤの元気のない様子が気になっていた。
そんな時
「あれ?爪のキラキラやめたの?」
アヤの爪が短く切り揃えられ、色も落ち着いたピンクに変わっている事に気づいて声をかけた。
「キラキラ…?あっ、ネイルのこと?
グローブはめてると取れちゃいそうで気になるからやめちゃった。爪が長いとボールも取りにくいし」
アヤは自分の爪を見ながら微笑んだ。
もしかしてオシャレできないから嫌になってるのかな…何かフォローをしなければ。
「爪、キレイにしなくていいの?
まあグラウンドにいたら身体中ほこりまみれにもなるし、女の子には最悪な環境だよなー」
ヤバい、ネガティブな事を言ってどうするんだよ。全然フォローできていない。
「マニキュアだけだったら簡単に色を変えられるし、これはこれで楽しいよ。『キラキラ』はシーズンオフにやればいいしね!
中島くん、男の子なのにネイルに興味あるの?珍しいね」
アヤは不思議そうにオレを見て、クスっと笑った。
いや、俺は別に爪に興味があるわけじゃないんだけど…
「あのさ、マネージャーってつまらない?」
「えっ?何で?」
俺の直球の質問に、目を見開き驚くアヤ。
「なんとなく…練習中も黙々とやってるし」
「んー…正直言うとまだ楽しいところまではいってないんだけど、いろいろ覚えたらきっと楽しくなるだろうなーって思うよ!スコアもつけられるようになりたいし…
だから早くマネージャーの仕事を覚えたくて頑張ってるつもりなんだけどなかなかね…」
そう言って苦笑いする。
今でも充分頑張ってると思うけどな。
そう声を掛けようと思った瞬間、
「もっと頑張らなきゃね」
アヤはにっこりと笑い、練習に戻っていった。
そんな健気な言動にオシャレを我慢してまで一生懸命マネージャーをやろうとしているのだと感じ、アヤに対する印象は良くなる一方だった。
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