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その後、田中さんから何か言ってくることはなくなった。
モテる田中さんのことだから新しい相手でも見つかったんだと思い、油断していた。
「アヤちゃん今終わり?」
あれから少し経った頃、退社時に田中さんから声をかけられた。
「そうですけど……お疲れさまです」
挨拶もそこそこにさっさと帰ろうと思ったら
「これから渋谷と飲みに行くんだよね。アヤちゃんも一緒にどうかって言ってたけど」
信用している同期の名前につい反応し、足を止めてしまう。でもしょうちゃんがそんな事言うかなー…怪しい。
疑う私の返事を待たずに
「先に行ってるからまた後でね」
田中さんは人懐っこい笑顔で軽く手を挙げ、会社を出て行った。
あれだけ忠告してくれたしょうちゃんが田中さんとのお酒に誘ってくるなんて、よっぽど何かあるのかも。
とりあえずウラを取ろうとしょうちゃんにLINEしたけど。既読にならない。じゃあ直接聞こうとしょうちゃんの課へ向かってみると、席にはいなかった。
「渋谷くん知りませんか?」
周りの人に尋ねる。
「渋谷ならさっき帰ったよ。今から飲みに行くって言ってたけど、一緒に行くの?」
「そうなんですけど確認したい事があって…」
ほんとに飲みに行くんだ…
この前田中さんにははっきり言ったし、しょうちゃんがいれば大丈夫かな。
“しょうちゃんと田中さんに誘われてちょっと飲みに行ってくるね。***っていうお店だよ。すぐ帰るね”
そうちゃんにLINEを送ると、田中さんに指定されたバーに向かった。
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